倉本歯科医院|歯内療法専門医による精密根管治療|東京都

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MTAの炎症抑制効果について

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前回までは歯内治療用材料として幅広く使用されているMTA(Mineral trioxcide aggregate)について書いていきました。
今回は私が東京医科歯科大学で研究していたMTAの炎症抑制効果について書いていきたいと思います。
 
今までの論文による報告でMTAの特性として
①優れた硬組織誘導能
②良好な生体親和性
③良好な封鎖性
④親水性
などが挙げられます。
 
しかし、歯髄保存治療で使用される場面では、本来生体内にある歯髄が生体外に露出し、また虫歯などによる細菌刺激や外界から様々な刺激を受けている状況が多く、歯髄はその時点で炎症反応が生じています。
歯髄は歯という硬い組織に囲まれているので、ひとたび炎症反応が生じると不可逆的に進行しやすい環境にあります。他の組織が炎症反応を生じると内圧が亢進し”腫れ”という症状が出ますが、歯髄は硬い組織に囲まれているので腫れることができないのです。その為、痛みが他の組織より出やすく、またその炎症反応を除去するには歯髄を除去するほか方法がなくなってしまいます。
 
MTAを使用した歯髄保存治療は良好な結果を示している報告が多く存在し、実際に診療にあたっていてもそれを実感することが出来ます。
その為、MTAには貼付した部位に対する炎症抑制効果があるのではないかと仮説を立てて研究をスタートしました。
 
私が研究した内容は炎症反応に関与することが多いマクロファージ”という細胞を主に使用しています。マクロファージは細菌による刺激や外界からの刺激を受けるとそれに反応し、周囲の細胞にそのことを伝える抗原提示細胞としての役割があります。マクロファージに対して炎症反応を抑制する効果があるのなら周囲の細胞へ刺激を受けているということを伝える反応を抑えられるのではないかと考えました。
 
最初は主に一つの細胞を使用しての実験を行い、その効果を検証していきます。
そのことを”In Vitro”の研究と言います。直訳すると試験管内で完結する研究のことです。
そこで結果を出して次の段階の”In Vivo”の研究、すなわち生体内での研究に移行します。
 
MTAによるマクロファージに対する炎症抑制効果を確認した後に、In Vivoの研究では実験用のラットを使用してMTAの炎症抑制効果を観察します。
ここでは人の歯髄保存治療と同じような環境を作ることが重要となります。
実際にラット歯髄を露髄させ、MTAによる直接覆髄を行いました。その後期間を置き、実際に歯髄内の細胞はどのような反応を起こしているのか観察していきます。
炎症反応を観察するにはその歯を抜いて歯髄を取り出し研究用の顕微鏡で観察する必要があります。なので実験の為に人の歯を使用することは出来ません。
診療中の歯髄の炎症反応の程度を測ることが出来ないのもその為です。
 
私の研究ではIn Vivoの実験においてもMTAは炎症を抑制させる効果のある物質の発現に寄与していることが分かりました。
 
このように、その材料にどのような効果があるのか検証するにはいくつものステップを踏んで検証する必要があります。
過去にどのような報告がされているのか、最新の報告はどのような結果となっているのか、日々アップデートが必要となります。
実際の診療で使用する材料はメーカーの指示に従うだけでなく、第三者の目からみてどのような効果があるのか検証している論文を調べることはとても重要なことなのです。
 
歯内療法専門医は歯内療法に関する過去、最新の論文をベースとして治療方法を作り上げていきます。それは一度決めたら不変的なものではなく、状況によって治療法も変えていく必要があります。
 
豊島区池袋の倉本歯科医院では歯内療法専門医による根管治療、歯髄保存治療を行っております。
お悩みの歯がありましたら、ご相談ください。
 
2021年11月26日 13:00

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