伝達麻酔 ~神経の大元に麻酔をする~
今回は前回の続きで麻酔の話を書いていきたいと思います。通常、歯科で行う麻酔は注射の麻酔(浸潤麻酔)をしています。浸潤麻酔は麻酔針を歯肉に刺し麻酔液を骨に浸透させていきます。歯肉に対する麻酔も同様です。
歯肉に対しては直接麻酔液が流入しているので麻酔効果は間違いないですが、歯に対する麻酔は骨を浸透させるので歯根の位置や骨の厚みによっては麻酔が効きづらい場合が多々あります。
大部分の歯根は頬側に位置しているので頬側に麻酔を打つことで効果が得られますが、下の奥歯(大臼歯)は歯根の先端が骨内の中央から舌側に位置していることが多く、その分骨が厚いので効きづらいことが多いのです。
下の親知らずの一つ手前の歯(下顎第二大臼歯)に関しては、骨の厚みが他の歯と比べて2倍以上ありますので余計に効きづらいのです。
量を多めにしても骨内を浸透するには時間がかかるため、また一度痛みを感じると麻酔効果は得られにくいことから、いくら麻酔を足しても治療中の痛みが取れない経験がある方もいるかと思います。
そのような事を事前に回避するためには伝達麻酔を行う必要があります。
浸潤麻酔が神経の抹消に対する麻酔に対して、伝達麻酔は浸潤麻酔より中枢の神経への麻酔を目的としています。
中枢の神経へ麻酔効果が得られれば、抹消の神経が麻酔が効きづらい位置にあったとしても問題ありません。
歯科医師が伝達麻酔を習うのは一般的には下顎孔伝達麻酔という方法です。詳しい方法は割愛しますが、この伝達麻酔にはリスクがあります。麻酔効果を得るための神経に直接刺してしまうと神経麻痺が起こったり、周囲にある大きな血管に麻酔液が流入してしまうと急激に血中濃度が上がってしまい中毒になったり血管損傷のリスクがあります。このようなリスクがあるために下顎孔伝達麻酔は敬遠されがちな麻酔手技となっています。
近年(約20年前ですが)、新たな伝達麻酔の方法が発表され当院ではその方法を採用しております。
それは“近位伝達麻酔”と呼ばれる方法です。麻酔効果を目指す神経は下顎孔伝達麻酔と同様ですが、麻酔針を挿入する位置がより抹消側なので近位という用語が付属します。
詳しい方法については後に書いていきたいと思います。
当院では、歯内療法専門医の処置時の麻酔に関しては特に気を使っております。根管治療は痛みを伴う処置になることが多いため嫌われがちな治療ですが、しっかりと麻酔効果が得られた状態で治療が出来れば患者さんは安心して治療に望めますし、我々も治療中に余計な気を使わずに治療を進めることができるため、とても効率的なのです。
豊島区池袋の倉本歯科医院では歯内療法専門医による根管治療、歯髄保存治療を行っております。
お悩みの歯がありましたら、ご相談ください。
https://kuramotodc-ikebukuro.com/reservation.html
2022年03月23日 13:30