意図的再植術(2) ~治癒に導く最後の手段~
今回も意図的再植術について書いていきたいと思います。意図的再植とは、歯を一旦抜いて、口の外で歯根に対する処置を行った後に、口の中に戻す方法です。
近年であればマイクロスコープを使用した外科的根管治療を行うことで良好な治療成績が示されていますが、その外科的根管治療で対応できないケースで適応されることが多い術式です。
外科的根管治療で対応できないケースの続きを書いていきたいと思います。
・周囲の解剖学的構造の為
下顎小臼歯の根尖付近にはオトガイ孔と言って、骨の中にある神経や血管の大元の通り道の出口があります。
根尖に対するアプローチをするために、オトガイ孔やその周囲を損傷することによって術後の神経麻痺や術中の大出血などを誘発する可能性があります。
また、上顎臼歯部の根尖付近には上顎洞と言って、鼻の横にある副鼻腔が存在します。
上顎洞の位置によっては切除した根尖が迷入してしまったり、肉芽掻把の際に上顎洞粘膜を穿孔してしまう恐れがあります。
リスクのない外科処置はないと思っていますが、その中でも外科的根管治療を行う上で考慮しなければいけない事項となります。
また両者の存在によって外科的根管治療による介入ができないケースがあり、その場合代替案として意図的再植術が検討されます。
・外科的にアクセスできない領域の処置が必要なケース
一般的に外科的根管治療では根尖を切除し、切断面から清掃、セメントの充填を行い、治癒を目指します。
しかし、アプローチが必要な部位が外科的にアクセスできない場合も考えなくてはなりません。
アプローチする為には、骨をより多く削る必要があったり、必要のない根の切削を必要とする場合です。
そのようなケースにおいても、意図的再植術が適応となるかどうか検討をします。
以前述べたように、意図的再植術を行うには、患歯が抜歯に適している歯かどうかが重要となります。
また抜歯に適している歯であっても、無事に抜けてくれる確固たる保証はありません。
意図的再植術は歯内療法における歯を保存する上で最後の砦となる場合が多いですが、適応となるかどうかの見極めが非常に重要となります。
論文などで示されている高い成功率(80~90%)は、適応かどうかの選択を厳しい基準で行っているが故です。
患者さんへの説明の際に、こちらが伝えようとしているニュアンスと患者さんが受け取るニュアンスでは齟齬が出てしまう事があります。
術前の説明をしっかりと行い、介入してからこんなはずではなかったと思われないことが必要な術式と考えています。
豊島区池袋の倉本歯科医院では歯内療法専門医による根管治療、歯髄保存治療を行っております。
お悩みの歯がありましたら、ご相談ください。
https://kuramotodc-ikebukuro.com/reservation.html
2022年09月14日 13:20