根管治療による歯の耐久性の変化 ~神経を取ると歯が脆くなる?~
今回は根管治療を行うことによる歯の耐久性について書いていきたいと思います。昔から歯の神経(歯髄)を取ると歯が脆くなるとまことしやかに語られていますが、これは間違いです。
結論から言うと、歯髄を除去すると歯が脆くなるのではなく、歯髄を除去する為に噛む面(咬合面)から根管にアプローチするための穴を開けることによって歯の耐久性が低下します。
以前の考えの元なる研究は、抜歯となった歯を調査したところ根管治療を行っていた歯が多かったために、そのような考えが広まったと考えられます。
ここで、一つの研究を紹介したいと思います。
根管治療を行う上で、根管にアプローチをするためには根管の入り口(根管口)を直線的に明示できるようにすることと教わりますし、これは実際正しいです。
しかし、近年海外では最低限度の切削で根管にアプローチをするConservative access cavity(CAC)という考えがあります。
利点としては切削量が少なくなるので、歯の耐久性の低下を極力防ぐことが出来るとのことです。
今回の研究はこのCACと通常行われる方法(Traditional access cavity(TAC))とを異なるNiTiファイルを用いて根管形成を行い、その後の破壊耐性を調べた調査となります。
TACにて根管形成した群では破壊時垂直荷重は①16.41kg②21.60kgで水平荷重では①13.13kg②17.28kgでした。対してCACにて根管形成した群の破壊時垂直荷重は①17.19kg②14.84kgで水平荷重は①13.75kg②11.87kgでした。
この結果よりCACにて根管治療の窩洞形成を行った方が歯の耐久性を低下させないことが分かります。
このことから全ての症例でCACを用いた方がいいのかと問われたらそれは否です。
CACは破壊耐性に対する面では優れている治療法ではありますが、感染の除去という面では脇が甘くなってしまいます。
これらを研究している実験では何も処置されていない歯を用いて研究されており、実際の診療場面では歯に虫歯があったり、既に被せ物を装着しているケースの方が圧倒的に多いです。
CACを目指すが故に感染の取り残しをして感染の除去を疎かにしてしまう方が、将来的な歯の耐久性が低下してしまいます。
CACのような方法もあり、それが歯の破壊耐性を従来の方法より高めることは知識として知っておき、そこからいかに感染や歯髄の取り残しを防ぐかを検討することが根管治療の成功率を高め、歯の生存率を高めるのに重要だと思います。
難しい症例だから歯内療法専門医による根管治療が必要というのもありますが、しかし単純な治療に見えて考えなければならないことは意外に多いというものです。
根管治療が必要だと診断された歯の治療に際しては、歯内療法専門医による治療を検討ください。
豊島区池袋の倉本歯科医院では歯内療法専門医による根管治療を行っております。
お悩みの歯がありましたら、ご相談ください。
https://kuramotodc-ikebukuro.com/reservation.html
2023年05月29日 13:40