Cryotherapy ~冷やすと術後の痛みが軽減する?~
今回はCryotherapy(凍結療法)について書いていきたいと思います。凍結療法は、冷やすことで組織温度を下げ、術後の疼痛、腫脹、浮腫を管理することを目的としています。
臨床研究では、凍結療法が急性筋骨格系疼痛、筋痙攣、結合組織緊張、術後疼痛、出血を軽減すると報告されています。
それは、血管構造、神経構造、組織代謝の変化を通じて作用すると考えられています。
適切に根管治療を行った後でも、患者は様々な程度の痛みを感じることがあり、ある研究によるとそれは最大53%に達すると報告しています。
歯内療法領域における凍結療法は2015年にin Vitro研究によって導入されています。
その報告によると、根管内に冷たい生理食塩水を5分間灌流させることで、歯根の外表面の温度低下が達成され、それは4分間維持されることを示しています。
また、2018年に報告された研究では、特に壊死歯髄や症候性根尖性歯周炎のある歯では、術後の痛みと鎮痛剤摂取の軽減に関連していると示されています。
しかし、この手法の有効性についてはより研究を重ねていく必要があることも示されており、発展途中の手技ということを覚えておかなければなりません。
ここで最近発表された根管治療における凍結療法についてサイトカインレベルを調査した研究がありましたので紹介したいと思います。
簡単に言うと、凍結療法を行った群と行なわずに通法の洗浄手順を実施した群(対照群)の根尖孔外の浸出液や血液、化膿性分泌物中のサイトカインレベルを調べて術後疼痛との関連を調査した研究です。
結果から言うと、凍結療法を実施した群では術後疼痛を訴えたり、鎮痛剤を摂取した患者の割合が少なかったことを示しています。
また、対象群では初回治療時と比較して2回目の治療時にはIL-1β、IL-2、IL-6の発現量が増加していたのに対して、凍結療法を実施した群ではそれらの値の上昇は認めませんでした。
今回の研究ではこのような結果が示されていますが、著者らは更なる追加の研究が必要であると述べており、この結果だけでは術後疼痛との因果関係を特定するのは困難です。
この凍結療法については、現状では数多くある治療法や手技の中の一つのオプション程度の認識でいいと思いますが、今後研究を重ねることによって、治療プロトコールに必須の手順となる未来もあるかもしれません。
この手の追加の研究発表があった際は紹介したいと思います。
豊島区池袋の倉本歯科医院では歯内療法専門医による根管治療を行っております。
お悩みの歯がありましたら、ご相談ください。
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2023年06月02日 13:30