倉本歯科医院|歯内療法専門医による精密根管治療|東京都

歯内療法専門医によるマイクロスコープ、歯科用CTを使用した精密根管治療を実施しております。

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2022年の記事:ブログ

虫歯について

2022年、今年最後の記事は虫歯について書いていきたいと思います。
 
虫歯は一般的な疾患ですが、予防可能な病気です。最近の疫学的データは世界的な有病率が過去25年間高いままであることを報告しています。
 
虫歯は微生物のバイオフィルムによって誘発される疾患であり、発酵性炭水化物の食事供給によって促進・維持されます。微生物のバイオフィルムが停滞している領域でエナメル質を脱灰して虫歯となります。エナメル質の脱灰が進行すると象牙質に細菌が侵入し加速度的に虫歯は進行して内部で拡がっていきます。
健全な状態であれば、エナメル質と象牙質の石灰化した殻が歯髄(歯の神経)を自然に保護しますが、未治療の虫歯は深い病変に進行し、歯髄の炎症反応を誘発し、歯髄の壊死、膿瘍と続き最終的には歯の喪失に至る可能性があります。
実験動物モデルを用いた研究で、歯髄が虫歯によって露出する前から細菌産生産物が象牙質を通って歯髄炎を誘発することが報告されています。
エナメル質の内層の象牙質は多孔質であるため、象牙質に侵入した虫歯があると歯髄炎を誘発するリスクが発生してしまいます。また、象牙質で虫歯は横方向にも拡がっていく為、脆くなったエナメル質が欠損して歯がある日突然欠けたなんて事が起きてしまいます。
エナメル質が欠けるほど象牙質内で虫歯が拡がっている場合、その多くは既に歯髄に近接しているか到達していることがほとんどなのです。
虫歯によって歯が欠けた場合、歯の神経を取るかどうかの瀬戸際にあると思ってください。
そうならない為には、定期的に歯科医院に通い検診やクリーニングを受けることが必要なのです。
ご自身で口の中を見た時に歯が黒くなっている場合、虫歯の可能性を疑うかと思いますが、重要なのは治療介入が必要な虫歯かどうかです。これはガイドラインによって示されているので今後紹介していきたいと思います。
治療介入が必要なく経過観察となった虫歯の管理をしていく上で、これまでと同じように歯磨きをしていてもその進行は抑制できない場合が多いです。最初に書いた通り、歯に微生物のバイオフィルムが形成された部分からエナメル質の脱灰が始まる為、虫歯が出来るということはその部分の清掃が不十分ということだからです。
歯科医師あるいは歯科衛生士によるブラッシング指導や歯磨き指導を受け、デンタルフロスや歯間ブラシなどの歯ブラシ以外の補助器具を使用していく必要があります。
 
歯内療法専門医は深い虫歯の治療や根管治療が専門領域ではありますが、これに至る前に予防できるに越したことはないと思っております。
口の中の状態を出来るだけ気にかけてあげることが、ご自身の歯で食べ物を長い間食べ続けられることに繋がり、それにより生活の質を落とすことなく人生を過ごすことが出来ます。
気になることがありましたら、お気軽にご相談ください。
 
豊島区池袋の倉本歯科医院では歯内療法専門医による根管治療を行っております。
お悩みの歯がありましたら、ご相談ください。
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2022年12月28日 13:19

根管の隙間の洗浄  ~器具が届かない場所~

今回は根管洗浄を更に深堀した部分について書いていきたいと思います。
 
根管洗浄とは化学的清掃とも呼ばれ、切削器具を用いた機械的清掃だけでは除去しきれない細菌や感染歯質の除去を目的として行われます。
歯根の中にある根管が感染することで根の先に膿が溜まります。根管治療の目的の一つはその部分の感染の除去です。
根管は根の先まで一直線に通っているイメージがありますが、実際は歯根の中を複雑に走行しています。
歯根の中で複雑に走行している根管系を完璧に清掃することは不可能ですので、除去しきれない部分に関しては根管充填によって封じ込めを行い感染の拡がりを防ぎます。
この除去しきれない感染部分をより少なくすることで治癒の可能性が高まります。
除去しきれない部分の一つとして根管と根管の間を繋いでいる部分がよく挙げられます。
それは特に奥歯に多く見られ、大臼歯2本で85%程度存在するという報告があり、それが存在する部分は根の先から3-6mmが最も頻繁に認められると報告しています。
根の先に行けば行くほどマイクロスコープを使用していたとしても見えない部分が出てきます。その見えない部分にこのような隙間は存在します。
なので、全ての根管にこのような隙間が存在することを前提として根管洗浄を行うことが重要となります。
 
従来の根管洗浄の方法は、洗浄針がついたシリンジを用いた洗浄方法です。最近ではこのシリンジ洗浄に加えて様々な方法を用いてプラスで根管洗浄を行います。
根管洗浄の肝は洗浄液をどこまで根管系に行き届けられるかにかかっています。
ある報告ではシリンジ洗浄だけでは根尖1/3の洗浄は不十分と報告しています。その為、洗浄液をより根尖付近まで、より根管と根管との間に浸透させることを目的として補助的な機器がしばしば用いられます。
最近では超音波機器による洗浄が広く知られていますが、更に根管内の洗浄効率を上げるために音波で作動する灌漑装置やレーザーを用いた根管洗浄が紹介されています。
 
これらの機器が具体的にどのようにシリンジ洗浄とは異なるか次の記事で論文を交えて紹介したいと思います。
 
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2022年12月22日 13:30

根管治療に関する情報収集  ~適切な情報を収集できているか?~

根管治療が必要と歯科医院で言われた方はそれをすんなりと受け入れるか、根管治療とはどのような治療なのか自分なりに調べるかに分かれるかと思います。
病院で自分に疾患があり治療が必要と言われたら、どのような疾患なのか?どのような治療が適切なのか?などを調べることは自然な事です。
病名が付いている疾患に関しては病名を検索することでどのような疾患なのか調べることができます。専門用語で書かれている場合もあれば、一般の方でも分かりやすいように嚙み砕いて説明している場合もあるかと思います。
ここで興味深い研究を一つ紹介致します。
根管治療のリスクに関する患者情報源としてYouTubeを使用することの評価をした研究です。
検索の仕方は人それぞれですが、検索の一つのツールとしてYouTubeを使用している方もいらっしゃるかと思います。私もスポーツのトレーニング方法や料理のレシピなどはYouTubeを使用して調べたりもしています。
YouTubeの投稿は誰にでも出来ることで、情報としてバランスの取れた偏りがないものなのかどうか怪しい投稿もあります。
この研究では根管治療のリスクに関する動画の内、バランスの取れた偏りのない情報を提供しているものは42%の動画しか達成していないと報告しています。
ここでは動画投稿元を規制機関、臨床医、非臨床医、ニュース・メディア、その他に分類しています。
その内、最もバランスの取れた偏りのない情報を提供していた投稿元は規制機関でした。
情報の質としては優れたものを提供している規制機関ですが、上記の投稿元の内”視聴回数とインタラクションが最も少なかった動画”も規制機関による動画でした。
規制機関が作成することで情報の質としては高いかもしれないが、その動画は退屈で視聴者の興味を引くような仕様にはなっていないかもしれないと推察しています。
YouTubeの中にある莫大な量の動画から、視聴回数が少ない動画を引き当てることの難しさはお分かりかと思います。
逆にセンセーショナルなタイトルや、視聴意欲を煽る強い言葉を使ったタイトルなどは視聴者の目を引き動画再生回数は上昇します。
そうすることで正しい情報が広まらないことを報告者は懸念しています。
対策として大学や専門機関が正しい情報を数多く投稿することを提案していますが、これも中々難しいことだと思います。
歯内療法専門医が根管治療に特化した歯科医師であるのと同じように、動画作成に特化した方が作成した動画に対抗できるという考えは私がいつも言っている事と矛盾してしまいます。
そのような動画を作成する際は専門の機関を頼ることも必要だと考えます。
 
医療情報を検索する際はその提供元がどのような機関なのか、どのような人物なのかを精査した上で検索して正しい情報を得られるよう注意してください。
 
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2022年12月21日 13:10

歯の生存率  ~歯の残りの量が大事~

今回は歯の生存率の中でも残存歯質の量の重要性について書いていきたいと思います。
 
根管治療が必要な歯の大部分は構造的に損なわれていることが多いです。
ある研究では、根管治療が開始された歯の83%が以前に治療をしてある歯で、さらにその71.3%の歯は歯冠の1/3以上に相当する歯質の喪失が見られたと報告しています。
違う研究では、根管治療後の歯の残存量が30%未満の臼歯(奥歯)の抜歯率は12.5%、30%以上残っている歯は3.5%と報告しており、残存歯質が30%未満の歯は30%以上残存歯質がある歯より約3倍も将来的な抜歯率が高くなることが分かっています。
 
しっかりとした被せ物を装着する上で歯肉より上に出ている歯の量が問題となりますが、1回目の治療では問題なく治療を終了できたとしても、将来的に根の先に膿が溜まったり、被せ物と残っている歯の間に虫歯が出来た場合はそこから更に残存歯質量は低下してしまいます。
歯の治療を何度も繰り返すということはその分だけ歯を残すことが難しくなる負のサイクルに乗ってしまっていることを意味します。
初回の根管治療の質が疎かだったり、感染の取り残しが顕著の場合はそのリスクは格段に上がってしまいます。
 
虫歯や歯周病は個人の口の中の環境や日々のブラッシングを含む口の中の清掃度合いによってセルフケアが可能ですが、根管内の感染の進行に関してはセルフケアで予防することはほぼ不可能です。
したがって、初回の根管治療こそ歯内医療法専門医による治療が必要となります。
マイクロスコープを使用して歯質の削除を最低限に留め、根管内の感染や再感染の防止を精密に行うことで将来的な再治療を防ぎ歯の生存率が高まります。
 
根管治療が必要と診断された際は、歯内療法専門医による治療があることを頭の片隅に留めておいていただければ幸いです。
 
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2022年12月14日 13:50

筋・筋膜性疼痛  ~歯が痛いように感じる?~

今回も前回と引き続き筋・筋膜性疼痛症候群について書いていきたいと思います。
 
筋・筋膜性疼痛症候群は、急性または慢性の局所的な筋原性疼痛およびこわばりを引き起こす南部組織の炎症状態のことです。
筋・筋膜性疼痛症候群とその歯と関連している咀嚼性筋・筋膜性疼痛症候群は、筋靭帯痛として診断できます。
 
筋・筋膜性疼痛症候群の生涯有病率は一般集団で25~85%の範囲であり、30~50歳の女性に多くみられると報告されています。
痛みの専門外来であるペインクリニック患者の最大90%、顎関節症患者の50%以上が咀嚼性筋・筋膜性疼痛症候群を呈しているという報告もあります。
 
歯の問題と並行して出現する場合もあれば、他の疾患と並行して出現する場合もあるので、見逃されやすく適切な診断が困難なことが多いのです。
咀嚼性筋・筋膜性疼痛症候群は歯を叩いたり、咬み合わせたりした際の感受性試験で陽性となる事が多いのです。
このことから極稀に必要でないにも関わらず歯内治療の介入を受けるケースも見られます。
歯が痛いから歯科を受診して歯に異常所見がなくても、とりあえず歯の神経を取る歯内治療を受けたけれども症状が取れないという結果になります。
 
咀嚼性筋・筋膜性疼痛症候群は、そもそも口の開け閉めに主に作用している顔の筋肉である咀嚼筋に問題となる疾患がある場合、顎関節のように関連している周囲の組織に問題がある場合、または他の問題(例えば噛み合わせの異常など)に続発する可能性があります。
咀嚼筋の一部分を押して疼痛を感じる点をトリガーポイントと言い、筋・筋膜に炎症があるのかどうかの一つの指標となります。
筋肉や筋膜の問題であることから、整体で腰や脚、腕などを押してもらうと特別痛みを感じたポイントがある方もいらっしゃるかと思いますが、それとほぼ同じです。
一時的に良くなっても日々の生活習慣と関連して再び症状が顔をみせることもしばしばあります。
 
このような顔面の疼痛に関しては、口腔顔面痛専門医や歯科のペインクリニックが範疇となります。
周囲の歯に問題が見られる場合にはまずは歯の治療をしてしっかりと治すことを先行して、それでも痛みや違和感の症状が残存する場合は上記の専門医に診てもらう流れとなります。
特に歯内療法の分野において関連が強い分野であるので、術前の診査・診断を適切に行うことであらゆる可能性を患者さんと共有することが出来ます。
先行して歯内治療が必要な状況であるならば、歯内療法専門医による診査を受け専門医による治療を受けることをお勧めいたします。
 
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2022年12月08日 13:00

痛みの関連について  ~歯の痛み?筋肉の痛み?~

今回は痛みについて書いていきたいと思います。
歯の痛みは最も一般的な口腔顔面痛の愁訴です。
歯の痛みの原因は様々で実際に歯が痛んでいる事もあれば、歯の周囲の組織が炎症を起こして痛みが出ている事もあります。
これらは総称して歯原性の疼痛と分類されます。
歯原性疼痛を紹介するということは非歯原性疼痛もあるということです。
実際、歯内療法専門医の診療所に来院する症例の約7%は非歯原性疼痛による関連痛と報告されています。
また、根管治療後にも持続する疼痛の53%~62%は非歯原性の関連痛であると報告されています。
さらに調べてみると、この非歯原性疼痛の80%が筋膜性疼痛症候群によるものであることが報告されています。
 
筋膜性疼痛症候群とは、急性または慢性の局所的な筋原性疼痛およびこわばりを引き起こす軟部組織の炎症状態と定義されています。
ざっくり言うと”筋肉に関連した痛み”ということです。
口の周りには複数の筋肉が存在し、口を開けたり閉めたり噛みしめを担う筋肉もあります。
この顔面の筋肉の痛みを歯の痛みと誤認してしまうことが多くあります。
もちろん実際に歯が原因で痛みがあり、それと筋肉の痛みが複合しているケースも多々あります。
しかし、歯を治療して異常所見がなくなっても持続する痛みに関しては非歯原性疼痛の可能性が高くなります。
 
歯内療法専門医は歯の神経に関する治療を行っている関係で痛みを取ってくれるスペシャリストと思っている方がいらっしゃいます。これは一般の歯科医師でも同じことを思っている場合があります。
しかし、歯内療法専門医は歯の内部の感染の除去やそれによる炎症を治癒させる事を本分としています。
その先に結果として歯が原因となっている痛みが取れるという仕組みです。
上記で書いているような非歯原性疼痛に関しても、あまり知られていませんが口腔顔面痛専門医という先生が存在します。
しかし、患者さん自身は歯の痛みを自覚しても、歯以外の痛みの可能性を考慮していきなり口腔顔面痛専門医を受診することはあまり現実的ではないかと思います。
その際は歯科医院を受診してしっかりと診査診断を行った上で、歯が関係ないことが考えられる痛みに対しては歯科医院から口腔顔面痛専門医の先生に紹介するのが確実です。
もちろん、歯が原因の痛みと歯以外が原因の痛みが複雑に絡み合っていることもありますので歯の治療が必要な状態ならば歯科治療を先行して行います。
ここでは歯をしっかりと治癒に導くことがその後の診療・治療にも影響を及ぼしますので、根管治療が必要な歯科治療に関しては歯内療法専門医による治療をお勧めいたします。
 
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2022年12月07日 13:30

歯の内部に穴が開いている③  ~歯を残すことができるのか~

今回も歯の内部に穴が開いてしまう“穿孔”について書いていきたいと思います。
 
初回の根管治療の際に穴が開いている場合は前回記述した何らかの要因によって歯が吸収してしまった場合や虫歯が進行した場合などが挙げられます。
また、以前に治療した際に穴が開いてしまっている場合もあり、それは通常のレントゲン写真のみだと検出できない場合があります。
レントゲン写真は撮影する角度によっては穴が開いている事が分からない場合があり、逆に通常のレントゲン写真で検出できる場合の方が少ない印象があります。
具体的な話をすると歯列に沿って歯の横方向に穴が開いている場合は通常のレントゲン写真でも検出は容易ですが、唇側、頬側や舌側方向は歯と重なっている関係で検出が困難となります。
根管治療を開始して初めて穿孔していることに気付く場合もあります。
 
そのような場合に有用となるのが歯科用CT(CBCT)です。
特に歯内療法の領域では小さな視野の画像で情報が事足りる為、通常のCT画像検査に比べて被ばく量も少なく済みます。さらに放射線が散乱するのを減らせるので画質を向上させることも可能です。
CBCTは穿孔の場所や方向、その周辺の組織の状態を3Dで視覚化することが出来ますが、歯科用材料が充填されていたりすると画像が見えにくくなってしまうこともあります。
穿孔が疑わしく通常のレントゲン写真で検出が困難な場合は術前にCBCTを撮像することを検討してもいいのですが、上記のようなこともある為、ある程度治療が進んでからCBCT撮像を行った方が良い場合もあります。
また穿孔の場所によっては通法の根管治療のみでは治癒に導くことが難しい場合もあるため、外科的根管治療の可能性を術前にお伝えすることも重要となります。
穿孔が起きていると一般の歯科医師では対応が困難な場合が多いので、その為保存が困難となってしまいます。
全ての穿孔している歯が保存できるとまでは言いませんが、穿孔していても諦めなくてもよい可能性があることは知っておいていただければと思います。
その際は歯内療法専門医までご相談することをお勧めいたします。
 
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2022年12月05日 13:40

歯の内部に穴が開いている②  ~歯を残すことができるのか~

今回も歯の内部に穴が開いてしまう”穿孔”について書いていきたいと思います。
 
歯の穿孔は、歯が吸収してしまったり虫歯の進行で起きてしまったり、治療中の偶発症として起きてしまうことがあります。
歯は時として原因不明に吸収を起こしてしまいます。吸収とは簡単に言うと歯の一部が溶けてしまうことです。虫歯により歯が欠けたり割れたりすることは聞いたことがあるかもしれませんが、虫歯でなくても歯の吸収は起きてしまう場合があります。
歯の吸収にも更に分類があり、”外部吸収”と”内部吸収”に分けられます。
外部吸収とは歯の外側から吸収が起きてそれが歯の内部の交通することで穿孔状態となります。
また内部吸収とは歯の神経(歯髄)を起点として起こる吸収でそれが拡がることで歯の外部と交通して穿孔状態となります。
穿孔の原因として歯の吸収以外にも虫歯の進行によって穿孔を起こしたり、治療中の偶発症として穿孔が生じることが多いです。
穿孔の発生率は複数の研究をまとめると0.7%~10%と報告されています。
また、穿孔を伴う歯内療法の失敗により抜歯された歯の割合は2.9%~4.2%と報告されています。
歯の穿孔は頻繁に起きるものでもありませんが、とても珍しい状況でもありません。
少し古い研究の報告では治療中の穿孔は発生の53%は歯の芯棒(ポスト)の挿入中に発生し、残りの47%は通常の根管治療中に発生すると報告しています。
この研究はマイクロスコープが歯科治療に広く用いられる前の研究なので、今調べるとまた違った結果が出ることが予想されます。
また、この研究では約75%が上顎で発生し、約25%が下顎で発生していると報告しています。
これは歯根の軸が歯肉より上に出ている歯の軸と微妙にズレている為に起こりやすく、上顎は覗き込んで治療をする為に下顎より起こりやすくなると推察されます。
根管治療後の被せ物を装着する上で必要な歯の芯棒(ポスト)を形成する際の穿孔も歯の軸と歯根の軸がズレていることが大きな要因となります。
どちらも軸がズレる原因として歯の内部が”見えない”ことに起因していると考えております。
歯の内部を治療する歯内治療を行う時は歯内療法専門医がマイクロスコープを用いて治療することで穿孔が起きるリスクを下げることができ、それによって歯を長期的に持たせることに繋がります。
マイクロスコープを用いた歯内療法はより精密に治療するイメージがあるかと思いますが、目を閉じて治療することから目を開いて治療をするくらいの大きな違いがあります。
まずはご相談ください。
 
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2022年12月02日 13:00

歯の内部に穴が開いている場合  ~歯を残すことが出来るのか~

今回は歯の内部に穴が開くこと“穿孔”について書いていきたいと思います。
 
根管治療は歯の内部の感染の除去、および再感染の防止を目的に行われています。
穿孔を起こすことにより歯の内部の感染がそこから周囲の組織に拡がったり、逆に歯の外側から細菌の侵入を許したり、または歯の耐久性を低下させることが懸念されています。
一昔前だと穿孔が起きた時点で抜歯になると言われており、それは歯内療法専門医以外の術者の治療では今もさほど変わりない考えです。
穿孔に対する治療法としてMTAという歯科用の材料を使用するということは歯科医の中では広く知られてきていますが、MTAを使用すれば全ての穿孔が治癒に導けるかというとそうではありません。
 
ここで一つの研究を紹介致します。
穿孔部位をMTAで封鎖して、その後14年間経過観察を行い、その治療効果を調べた研究です。
この研究では約93%で治癒が認められ、MTAの使用が穿孔部位の封鎖に効果的だということが再確認できましたが、ここで重要なのが治癒しなかった残りの7%です。
ここで述べられている治癒に導くことができない要因として、穿孔のサイズや部位が挙げられています。
穿孔のサイズが3mmより大きい場合や穿孔部位が歯周ポケットと交通していたり、より歯の上の方の部位の場合は再発したり治癒しないリスクが挙げると述べています。
術前にレントゲン写真やCT画像で確認できる場合もありますが、術中に穿孔を認める場合もあります。
重要なのが、それが治癒に導くことができる可能性が高いのかどうかです。
治療前や治療中でも起こっている情報を患者さんと共有していき今後の治療方針を決定していきます。
予後が悪いことが予想される場合は次の治療の一手に進んだ方が得策な場合もあります。
それは患者さんの考え方によって変わってきますので、こちらから考えを押し付けることは致しません。
もちろん、歯の内部に穴が開いているから抜いた方がよいと言われた場合でも救える可能性がある歯については全力を尽くしますので、まずはご相談ください。
 
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2022年11月30日 13:10

根管治療の適用、非適用④  ~ガイドラインに基づいた判断~

今回も引き続き根管治療の適用、非適用について書いていきたいと思います。
 
前回までは、”機能させることも修復させることもできない歯”、”歯周組織の支持が不十分な歯”は根管治療の非適用であると述べていますが、今回は”予後不良の歯、非協力的な患者、または歯科治療の手順を実行できない患者”について書いていきます。
今回のテーマの内の”予後不良の歯”というのは”機能させることも修復することもできない歯”と被っている部分もありますが、ざっくり言うと”治る見込みのない歯”ということになります。
根管治療をしても治癒に導けない状況として、代表的な例は歯根破折している歯です。
歯根破折とは歯根に垂直性のヒビが入ってしまうことで、ヒビと聞くと骨にヒビが入るくらいのイメージを持たれる方もいらっしゃるかと思いますが、骨とは違い歯には自己修復機能はなく僅かなヒビでも致命的となってしまいます。
歯根にヒビが入ったり、割れていても極論を言うと日常生活に支障なく食事の際に使用する(しっかり噛める)ことが出来れば問題ないと私は考えます。
それでは何が問題となるかというと、ヒビ(破折線)に細菌が感染することが最大の問題点となります。
歯根に入るヒビは髪の毛一本程度の大きさでも致命的となります。それはそのヒビの大きさでも細菌が侵入するには十分な大きさだからです。
更に歯根に入ったヒビが口の中と交通することで予後は完全に不良と判断されます。
根管治療をすることで一時的に(治療の際中のみ)感染の除去は可能かもしれません。しかし、治療の合間や治療後にヒビから細菌が絶えず侵入することで焼け石に水状態となってしまいます。
さらに現代の歯科医療の技術ではヒビを完全に修復することは困難とされています。不可能と書かない理由として歯根破折している歯を治癒に導けたという報告を多数耳にするからです。
専門医は論文などでしっかりと科学的に実証された研究やデータを基に治療法を選択しています。それらの積み重ねがガイドラインとして一般的な治療法として確立していきます。
治癒に導くことが科学的に保証されていない治療法を選択する場合、患者さんの強い希望がない限りは行わないのが現状です。
その一時良くなっても、時間が経って再発するリスクが限りなく高いからです。
もちろん、患者さんの考えからは人それぞれですので、よくよく相談した上で治療法は決定していきます。それは術中の状況も逐一説明して決定していきます。
術前に予後が悪いことが予想される歯や、術中に予後が悪くなる所見が発見されてしまった歯などは十分な説明、相談が必要不可欠と考えます。
その為にも現状で起きている事象をしっかりと把握できる環境で治療を進めることが何より大事であり、それが出来るのが歯内療法専門医での治療と考えています。
まずはご相談ください。
 
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2022年11月25日 13:00

倉本歯科医院

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