倉本歯科医院|歯内療法専門医による精密根管治療|東京都

歯内療法専門医によるマイクロスコープ、歯科用CTを使用した精密根管治療を実施しております。

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根管治療の適用、非適用④  ~ガイドラインに基づいた判断~

今回も引き続き根管治療の適用、非適用について書いていきたいと思います。
 
前回までは、”機能させることも修復させることもできない歯”、”歯周組織の支持が不十分な歯”は根管治療の非適用であると述べていますが、今回は”予後不良の歯、非協力的な患者、または歯科治療の手順を実行できない患者”について書いていきます。
今回のテーマの内の”予後不良の歯”というのは”機能させることも修復することもできない歯”と被っている部分もありますが、ざっくり言うと”治る見込みのない歯”ということになります。
根管治療をしても治癒に導けない状況として、代表的な例は歯根破折している歯です。
歯根破折とは歯根に垂直性のヒビが入ってしまうことで、ヒビと聞くと骨にヒビが入るくらいのイメージを持たれる方もいらっしゃるかと思いますが、骨とは違い歯には自己修復機能はなく僅かなヒビでも致命的となってしまいます。
歯根にヒビが入ったり、割れていても極論を言うと日常生活に支障なく食事の際に使用する(しっかり噛める)ことが出来れば問題ないと私は考えます。
それでは何が問題となるかというと、ヒビ(破折線)に細菌が感染することが最大の問題点となります。
歯根に入るヒビは髪の毛一本程度の大きさでも致命的となります。それはそのヒビの大きさでも細菌が侵入するには十分な大きさだからです。
更に歯根に入ったヒビが口の中と交通することで予後は完全に不良と判断されます。
根管治療をすることで一時的に(治療の際中のみ)感染の除去は可能かもしれません。しかし、治療の合間や治療後にヒビから細菌が絶えず侵入することで焼け石に水状態となってしまいます。
さらに現代の歯科医療の技術ではヒビを完全に修復することは困難とされています。不可能と書かない理由として歯根破折している歯を治癒に導けたという報告を多数耳にするからです。
専門医は論文などでしっかりと科学的に実証された研究やデータを基に治療法を選択しています。それらの積み重ねがガイドラインとして一般的な治療法として確立していきます。
治癒に導くことが科学的に保証されていない治療法を選択する場合、患者さんの強い希望がない限りは行わないのが現状です。
その一時良くなっても、時間が経って再発するリスクが限りなく高いからです。
もちろん、患者さんの考えからは人それぞれですので、よくよく相談した上で治療法は決定していきます。それは術中の状況も逐一説明して決定していきます。
術前に予後が悪いことが予想される歯や、術中に予後が悪くなる所見が発見されてしまった歯などは十分な説明、相談が必要不可欠と考えます。
その為にも現状で起きている事象をしっかりと把握できる環境で治療を進めることが何より大事であり、それが出来るのが歯内療法専門医での治療と考えています。
まずはご相談ください。
 
豊島区池袋の倉本歯科医院では歯内療法専門医による根管治療を行っております。
お悩みの歯がありましたら、ご相談ください。
https://kuramotodc-ikebukuro.com/reservation.html
2022年11月25日 13:00

根管治療の適用、非適用③  ~ガイドラインに基づいた判断~

今回も根管治療の適用、非適用について書いていきたいと思います。
 
根管治療を成功に導く上で、治療による効果がある歯なのかどうか診断することは根管治療における最も重要な事の一つと考えております。
前回は根管治療の非適用となる”機能させることも修復することもできない歯”について書きましたが、今回は”歯周組織の支持が不十分な歯”について書いていきます。
 
根管治療は歯内療法の領域の一つであり、歯内療法とは読んで字の如く、歯の内側の治療を指します。
歯は硬い硬組織で構成されており、その内側に存在する根管や象牙質が感染すると歯ではなく歯の周りの組織に悪影響を与えて”痛み”や”腫れ”の原因となります。
根管治療とは歯の内側の感染を除去することで歯そのものを保存したり、歯の周囲の組織の治癒を目的の一つとしています。
そこで今回のテーマである”歯周組織の支持が不十分な歯”ですが、ざっくり言うと歯周病が進行して歯の周囲の骨が減っている状態のことを指します。
根管治療が歯の内側の治療に対して、歯周病とは歯の外側(歯根表面)が細菌に感染することで進行します。
根管治療が必要となる歯については患者さんご自身での予防は中々困難を極めますが、歯周病は患者さんご自身のセルフケアが最も重要となります。
歯科医院で何カ月かに一度のメインテナンスを実施していても、日々のセルフケアが疎かであったり清掃のポイントがズレていたりすると歯周病は進行してしまいます。
虫歯などとは異なり、歯周病は進行することで歯がまったくの無傷な状態でも歯周病の進行度合いによっては歯が抜けてしまう恐ろしい疾患です。
最近では歯周病治療における材料や術者の技術の進歩、歯周病予防の啓蒙の甲斐あって救える範囲も拡大していますが、それでも手遅れにならないように定期的な歯科医院によるメインテナンスが重要なのです。
ここまで書いたことをまとめることで”歯周組織の支持が不十分な歯”が根管治療の非適用となる理由が見えてきます。
つまり、歯の内側の感染を除去して歯を治療しても、歯の外側の組織が細菌感染に侵されることで根管治療自体が成功しても歯周病が原因で歯を抜歯せざるを得ない状況のことを指しています。
 
歯一本を何とか保存したいと考えておられる方は日々のメインテナンスもしっかりされている方が多いというのが私個人的な感想ですので、根管治療専門で治療を行っていると重度の歯周病で治療が非適用となる状況は少ないように感じます。
しかし、歯周病と根の先の膿が合併しているような状況に遭遇することも少なくありません。
そのようなケースはまずは根管治療を行い、歯の内側の感染を除去した後に歯周病治療を進めていくのが治療のセオリーとなります。
歯周病治療を進めていく上で根管治療が必要と言われた場合も根管治療は歯内療法専門医による精密な根管治療をお勧めいたします。
根管治療の精度によってその後の歯周病治療で歯が保存できるかどうかが左右されると言っても過言ではないと思います。
まずはご相談ください。
 
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2022年11月24日 13:10

根管治療の適用、非適用②  ~ガイドラインに基づいた判断~

今回も前回と引き続き根管治療の適用と非適用について書いていきたいと思います。
 
根管治療の適用に関しては前回記載致しましたので、今回は根管治療の非適用の歯について書いていこうと思います。
 
ヨーロッパ歯内療法学会のガイドラインを引用すると、根管治療の非適用となる歯は
 
・機能させることも修復することもできない歯
・歯周組織の支持が不十分な歯
・予後不良の歯、非協力的な患者、または歯科治療の手順を実行できない患者
・合理的な期間内に改善できない口腔状態の悪い患者の歯

 
このように記載されています。
一つ目の”機能させることも修復することもできない歯”というのは、根管治療が終了した後に被せ物や詰め物の処置を行うことが出来ず、噛ませることが出来ない歯を指しています。
根管治療が終了した後、被せ物の処置を行い口の中で機能させる為にはある程度のご自身の残っている歯の量が重要となってきます。
被せ物が取れた状態を長く放置したり、虫歯を長い間放置したり、治療途中で歯科医院への通院が途絶えてしまった際などに、次見た時には最終的な修復が不可能な状態となっているというケースを数多く見てきました。
身体の中でも歯は失われてしまったら二度と元には戻らない組織の一つです。
上記のように歯に何らかの異常を感じた際はまずは歯科医院の受診をお勧めいたします。
症状がなくても気になるようなら歯科医師に診てもらうことで治療が今すぐに必要な状態かどうか診断してもらうことが重要です。
その先で、根管治療が必要となる治療手順となる場合は歯内療法専門医による根管治療をお勧めいたします。
被せ物が取れてしまった歯や虫歯が大きく進行している歯などは肉眼では見えない異常が存在している場合もあり、場合によっては保存が不可能な状態かもしれません。
その異常を見落としてしまうと、治療が一通り終わった後に異常部分が原因で症状が出て再治療となってしまったり、または治療が長期間に及んでしまうリスクがあります。
最初の治療で悪い要因を洗い出し、それを潰していくことで、その歯が再治療が必要となる状況を回避できると考えています。
何事も最初が肝心なのです。
根管治療をした歯に関して、今後治療が必要でなくなることをゼロにするのは不可能ですが、それを限りなくゼロに近づけられるよう努めております。
 
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2022年11月21日 13:30

根管治療の適用、非適用①  ~ガイドラインに基づいた判断~

今回は根管治療の適用となる状況について書いていきたいと思います。
 
根管治療だけではなく、”治療”は機能的または審美的に重要で、かつ予後が妥当な歯に対して計画する必要があるということがヨーロッパの歯内療法学会のガイドラインに記されています。
機能的にかつ審美的に修復でき、そして予知性のある歯かどうかを根管治療に取り掛かる前に診断しないといけません。
具体的にガイドラインにはどのように記載されているのか見ていきましょう。
 
根管治療の適用
・根尖性歯周炎の臨床的および放射線学的所見の有無に関わらず、不可逆的損傷または壊死した歯髄
→ざっくり言うと、”歯の神経の炎症が強すぎて元には戻らない状態あるいは歯の神経が完全に死んでしまっている”ということです。
 
・補綴処置の作製前にポストスペースを提供するため、修復処置前の疑わしい歯髄の状態、歯根切除または片側切除の前に歯髄が露出する可能性がある歯など
→これもざっくり言うと、”入れ歯を作ったり、被せ物を入れたりするために歯の神経を取らざるを得ない状況の場合や、歯周病や歯根破折などで歯根の半分がダメになってしまった歯を保存する状況”のことを言っています。
 
・根管内の充填が不十分で、根尖性歯周炎および症状の発生または持続の放射線学的所見を伴う歯
→根の中の詰め物の詰め具合が不十分で、レントゲン写真で根の周囲に問題を認める歯のことです。
 
・補綴修復に交換が必要や、または歯冠部を漂白する場合に根管充填が不十分な歯
→被せ物や詰め物をやり変える際や歯を内部から漂白する際に、以前の根管治療が不十分な歯のことです。
 
根管治療の適用となるとこのような文言となります。
 
”痛い”や”腫れた”などの症状がある歯に根管治療が必要となる状況は容易に想像がつくかもしれませんが、被せ物を新たに作る為・被せ物をやり変える為となるとあまり馴染みがないかもしれません。
根管治療とは基礎工事と同じで、上物を作る際ややり変える際には必要となる手順なのです。
もちろん、必要ないケースも多々あります。
根管治療は歯内療法専門医で行うことで、その後の被せ物や入れ歯を作った後や、新たに被せ物を作った後で何か起こるリスクを最小限にすることが出来ます。
ここを疎かにしてしまうことで一から根管治療からやり直しになるか、歯の状態によっては抜歯となってしまうケースもあります。
症状がない状況や、特別な歯のケースでなくても、根管治療を行う際は歯内療法専門医による治療をお勧めしております。
 
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2022年11月18日 13:40

矯正治療による影響  ~歯の神経を取っているとどうなるか~

今回は根管治療歯の矯正治療による影響について書いていきたいと思います。
 
矯正治療は歯に適度な力を加えることによって、歯の周囲の骨の吸収と添加を繰り返して歯が移動します。
矯正治療の力が加わることによって、骨だけでなく歯根が吸収してしまうことがあります。
今回紹介する研究では、根管治療をしてある歯(歯の神経を取ってある歯)と歯の神経が残っている歯で歯根表面の表面積や体積に違いがあるかどうか調査した研究となります。
 
矯正治療の前後にCBCTを撮像して歯根表面の表面積と体積を測定して比較しています。
結果は、根管治療歯の矯正治療後の表面積の平均変化率は2.09%で、根管治療をしていない歯は3.38%でした。また根管治療歯の体積の平均変化率は2.62%で、根管治療をしていない歯は4.10%でした。
この研究の結果から、根管治療歯は矯正治療後の歯根吸収の影響を受けにくいことを示唆しています。
根管治療をしていない歯、つまり歯の神経が残っている歯の方が細胞の種類が豊富なことから様々な影響を受けやすいことが推察されます。
矯正治療の力によって知らず知らずの内に歯の神経が死んでしまっている場合もあります。
矯正治療直後の場合、歯髄検査に反応がなくても一過性の仮死状態になっている場合もあるために早期に治療介入することはお勧めできません。
その後の経過を追うことによって、仮死状態から歯の神経が復活するケースも多く見られます。
 
矯正治療を行う前の検査で根の周りに病変を認め根管治療が必要と矯正専門医が判断した場合は、歯内療法専門医による根管治療をお勧めいたします。
矯正治療前にしっかりと治療することによって、矯正治療中や治療後に再発するリスクを下げることができると考えております。
 
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2022年11月09日 13:30

歯根周囲の膿の拡がり  ~日々のストレスの影響は?~

今回は根尖病変による骨吸収について書いていきたいと思います。
 
歯髄(歯の神経)が失活すると歯髄内の免疫細胞等の防御機構が働かなくなる関係で根管内が感染を起こします。
これは以前の治療で歯の神経を取った歯も同様です。
根管内が細菌感染を起こすと、その反応として歯根周囲の骨が吸収され膿が溜まる状態となります。
そのような状況の場合、治療法としては根管治療と抜歯が選択肢として挙げられます。
 
今回はこのように根尖病変による骨吸収が日々のストレスによって影響を生じるかどうかを研究した報告を簡単に紹介したいと思います。
この研究はヒトではなく、ラットを用いたIn Vivoの研究となります。
ラットの歯に根尖病変を誘発させ、母体分離によってラットに日々のストレスを与えました。
これらは対照群とそれぞれ比較されました。
結果としては、根尖病変を誘発させたのみの群と比較して、根尖病変を誘発させ日々のストレスを与えられた群は有意に炎症性浸潤の強度が大きく、骨吸収の大きさも有意に大きかったと述べています。
このことから根尖病変を有している歯に対しては、日々のストレスが骨吸収の大きさに関係していることが推察されます。
生体はストレスを感じると細胞レベルで影響が出てきます。それは自分では気づかないレベルの影響です。
 
日々の生活をストレスなく過ごすことは困難かと思われます。
根尖病変は無症状の内に生じて、無症状の内に進行していることが多いです。
したがって、定期的な歯科医院による検診が重要となります。
ご自身のお口の中の状態を知っているのと知らないのとでは大きな違いがあります。
レントゲン写真で根尖病変を認めても無症状の為、経過観察とする場合もありますが、時間が経ってから根尖病変の拡大を認める場合は治療介入をするべきかどうかの相談をする必要があります。
 
定期的な検診はお近くの通いやすい歯科医院をお勧め致しますが、根管治療が必要な場合は歯内療法専門医による治療をお勧め致します。そうすることでご自身の歯を長く持たせられる可能性が高まると考えております。
 
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2022年11月04日 13:00

根管充填歯の割合  ~根管治療を受けたことがありますか?~

今回は根管充填歯の割合について興味深い研究がありましたので紹介していきたいと思います。
 
根管充填歯とは根管治療を受けてレントゲン写真で根管充填が確認できる状態である歯のことです。
この研究では20世紀から21世紀にかけての73個の論文をまとめて分析して発表しています。
 
20世紀では、根管充填歯を有している割合は10.2%でしたが、21世紀では7.6%でした。
年代が進むにつれて”生活水準の向上”、”歯科医療へのアクセスの促進”などにより虫歯の発生率を低下させたことにより根管充填歯の割合が減少したと推察されます。
全てのデータを総合すると、世界的に歯の8.2%が根管治療を受けており、18歳以上の成人の55.7%が少なくとも1つの根管充填歯を有していると結論付けています。
この研究で用いた論文のデータでは、ヨーロッパと南米が根管充填歯を有している割合が高いことを示しています。
また、アフリカが根管充填歯の割合が最も低いことを示していました。
経済発展のレベルの違い、歯科医療へのアクセスの違いが大陸間での違いとして観察されたと述べています。
 
根管治療が必要な歯の治療法としては、根管治療を受けるか抜歯をするかの2択となります。
様々な理由により根管治療を受けることができず、それが必要な場合抜歯を選択せざるを得ない地域があることも事実です。
 
世界の人口の半数以上が経験する根管治療という医療行為を成功に導くことが重要であるということがこの研究から読み解くことができます。
ご自身の歯で出来るだけ長く食事が出来るように、根管治療は歯内療法専門医による治療をお勧め致します。
 
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2022年10月26日 13:20

歯科用CTの有用性  ~根管治療を行う上で必須か?~

今回は歯科用CTについて、特に歯内療法の領域で最も一般的に用いられるCBCT(Cone Beam Computed Tomography)の有用性について書いていきたいと思います。
 
近年の歯内療法における三種の神器の一つとしてCBCTの存在が挙げられます。
従来のレントゲン写真だと三次元の身体の構造を二次元に投影している関係で、正確な診査や診断が困難な場合が数多くありました。
CBCTは三次元的に画像検査ができるので、歯根の形態や根管の形態、検出、数の同定、病変の拡がり、周囲構造物との位置関係、骨の厚さの診査などの精度が格段に上がります。
術前に歯や根管、病変の拡がり、周囲構造物との位置関係を正確に診査できることで、治療計画の立案もレントゲン写真のみで行うよりもよりスピーディーになります。
また、保存が不可能な歯の状態を一早く検出できるので、無駄な治療介入による費用や時間の削減にも寄与します。
 
根管治療を専門としている身からすれば、術前にその歯の状態をより正確に知れることはなによりも重要と考えます。
しかし、CBCTが根管治療の結果に直接影響を与えるわけではないので、そこは注意が必要です。
さらに、ある論文では歯科医はその使用法に精通し、その治療にあったCBCTの診方についてトレーニングを積む必要があると述べています。
 
根管治療を行う前の術前の診査・診断はとても重要なウエイトを占めています。
根管治療についてのお悩みは歯内療法専門医へご相談ください。
 
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2022年10月20日 13:10

歯髄炎に対する処置  ~神経を全て取る必要があるか?~

今回は歯髄炎に対する処置について興味深い論文が発表されたので、書いていきたいと思います。
 
歯髄(歯の神経)が炎症を起こした場合の治療法の選択肢は”抜歯”か”根管治療”かの2つの選択肢しかありません。
近年、歯髄保存の観点から様々な術式による治療が検討されてきましたが、この研究は歯髄切断療法と根管治療を比較しているので、歯髄切断療法について簡単に書いていきます。
 
歯髄切断療法とは、炎症や感染が生じた部分の歯髄のみを除去して、炎症反応の少ない歯髄を温存する術式です。
これは歯髄と直接接触する材料がMTAであることが前提で研究されているケースが多いです。
考え方としては歯髄保存治療と似ており、歯髄の除去範囲が多いと”歯髄切断療法”と言われたりします。
この研究では炎症のある歯髄に対して、根管治療あるいは歯髄切断療法を行った場合の術後7日における疼痛に違いはなかったと結論付けています。
患者さん的には、痛みが取れればどちらでも良いと思うかもしれません。私が患者でもそう思うと思います。
しかし、切断し覆髄した歯髄の反応はやってみないと分からない点が数多くあります。
我々が最も危惧している事として歯髄の狭窄、根管の閉塞が挙げられます。
その場の症状はおさまって良いのですが、将来的に歯髄が失活(歯の神経が死んでしまう)し根管治療が必要となった場合、その治療の難易度は上記の二つが重なると跳ね上がってしまいます。
根管を探索していく過程で歯の穿孔が起きてしまった場合、最悪抜歯も選択肢の一つとして浮上してきます。
もちろん歯内療法専門医による根管治療の場合、このリスクはかなり下げることができると考えます。
 
その場の症状を取り快適に生活できる手助けをするのは勿論大事ですが、将来的な事も考えて治療法をよく選択する必要があるということです。
正直、現段階では歯髄切断療法を歯髄炎の際の治療法の一つのオプションとするにはエビデンスが不足しているのが現状です。
 
歯髄の炎症が起こり、根管治療が必要となった際は歯内療法専門医による治療をお勧め致します。
その歯にとって初めての根管治療が最後の根管治療になるよう最大限努力して参ります。
 
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2022年10月19日 13:30

外科的根管治療  ~マイクロスコープの必要性~

今回は外科的根管治療について書いていきたいと思います。
 
外科的根管治療とは、通法の根管治療で治療に対して反応が見られなかったり、補綴物の影響で通法の根管治療が困難であったり、根管内の状況により通法の根管治療では治癒が見込めない場合などに対して用いられます。
通法の根管治療は歯の上の方から治療をしていきますが、外科的根管治療は歯肉を切開剥離して直接根尖部に対してアプローチを行います。
直接根尖部にアプローチが出来るので、根尖周囲の病変の掻把や根尖部付近の根管あるいは側枝といった通法の根管治療では理想的に清掃しにくい部分を切除することで病変の治癒を目指す一方で、根管上部は外科的根管治療では触ることができないことがデメリットでもあります。
したがって、通法の根管治療を行い、それでも治癒しない場合に外科的根管治療を行うことが成功率を向上させるポイントの一つでもあります。
 
外科的根管治療は歯根端切除術を含む歯内療法領域の外科処置の総称ではありますが、ここでは歯根端切除術について書いていきます。
歯根端切除術は一昔前までは口腔外科が取り扱う領域でした。
しかし、従来の歯根端切除術では成功率は芳しくなく再発してしまうケースが散見されました。
1990年代に入り歯科用マイクロスコープを歯根端切除術に応用し始めたことをきっかけに歯内療法の領域でも歯根端切除術を取り扱うケースが増えてきました。
歯科用マイクロスコープを使用することで、根尖部の観察、切断歯根面の観察、歯根の切断角度などが適切に行えるようになり、成功率が向上しました。
従来の歯根端切除術とマイクロスコープを使用した歯根端切除術の成功率を比較した最も有名な研究が2010年に発表されていますが、この時点で従来の歯根端切除術の成功率が59%に対して、マイクロスコープを使用した歯根端切除術の成功率は94%であったと報告されています。
この94%という成功率はマイクロスコープを使用すれば誰でも達成できるということを意味してはいません。
適切な症例選択、適切なトレーニングを受けた術者といったいくつかの関門を通過したケースに対する成功率なのです。
 
歯内療法専門医が適切に診査・診断を行い、通法の根管治療をまず選択する必要があるのか、外科的根管治療が必要になりそうかどうかを判断し、ご相談することが重要となります。
まずは専門医にご相談ください。
 
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倉本歯科医院

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