倉本歯科医院|歯内療法専門医による精密根管治療|東京都

歯内療法専門医によるマイクロスコープ、歯科用CTを使用した精密根管治療を実施しております。

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細菌の感染経路について

今回は細菌の感染経路について書いていきたいと思います。
 
エナメル質などの硬い組織によって護られている象牙質や歯髄、根管がなぜ細菌による感染を起こしてしまうのか。
虫歯によってエナメル質が破壊され象牙質に侵入し、細菌刺激によって歯髄が感染し、歯髄が失活し(神経が死んでしまう)細菌の侵入をより深部まで許してしまう。
歯をぶつけたり、日々の嚙み合わせによってエナメル質に亀裂が生じ、細菌などの侵入を許してしまう。
食事などによる咬耗や歯ブラシなどによる摩耗によってエナメル質が削られ、象牙質が口の中に露出することによって細菌などの侵入を許してしまう。
などが挙げられます。
これらは歯冠側からの感染と呼ばれています。
要は歯の上からの感染です。
 
もちろん経路はこれだけではありません。
上から感染するということは下からも感染するのです。
これを根尖部、根側部、分岐部方向からの感染と言います。
歯冠側はエナメル質によって通常は保護されていますが、歯根部分にはエナメル質はなくセメント質や歯根膜といった組織はありますが、歯根部の象牙質から容易に感染が進行してしまいます。
歯周病の進行によって歯周ポケットが深くなり、それに伴い歯根部が露出することによって根管側枝や根尖分岐、根尖孔などの開口部から歯髄へ上行性(逆行性)に感染してしまうことが原因としては多いです。
 
次は、下からの感染と似ていますが、隣在歯からの感染もあります。
根の周りの病変が拡大し、隣の歯の根尖に到達すると、周囲の環境や組織の破壊により歯髄が失活してしまい、上行性感染を引き起こしてしまいます。
 
他は、顎骨内の腫瘍や嚢胞、親知らずなどの埋伏歯などが原因で感染が引き起こされるケースもあります。
 
今回は歯根部への感染経路について書いていきました。
これによってエナメル質がいかに大事な存在であり、また、根尖病変を放置すると周囲の歯の歯根へ悪影響を及ぼしたり、歯周病を放置することで根管内にまで感染が及んでしまうことがイメージ出来たと思います。
 
歯周病などと根尖病変が併発している場合は根管治療のみ、歯周病治療のみをやっても治癒することはありません。
どちらも適切に、適切な順番で治療することが重要となります。
当院では歯内療法専門医による根管治療に加え、歯周病治療が必要な場合には院長の方で対応する場合と、歯周病専門医にご依頼し対応する場合があります。
ご自身では分からないことがあるかと思いますので、そのような場合は治療を開始する前にしっかりと説明し、理解・納得された上で治療を進めてまいります。
 
豊島区池袋の倉本歯科医院では歯内療法専門医による根管治療、歯髄保存治療を行っております。
お悩みの歯がありましたら、ご相談ください。

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2021年12月07日 13:30

歯根周囲の炎症反応について

今回は歯根周囲の炎症反応について書いていきたいと思います。
 
レントゲン写真を撮ると根の周囲に黒い影があり、根の周りや先が膿んでいると説明を受けた方もいるかと思います。
一般的に膿とは炎症反応による産物なので、レントゲン写真の黒い影の大きさで現在の炎症の程度を測ることは出来ません。
しかし、レントゲン写真で黒い影が見えている状態ということは治療直後でない限りは、歯が感染しており、歯根周囲に炎症反応が生じているというサインになるので、治療が必要な状態と言えます。
その状態のことを教科書的な診断名で言うと”根尖性歯周炎”と言います。
書いて字のごとく、”根の先の歯の周りの炎症”のことを指しています。神経を取った歯が痛むはずがないと思っている方もいらっしゃるかと思いますが、この場合、炎症反応が生じて痛んでいるのは歯ではなく周囲の骨や歯肉といった組織なのです。
 
根の周囲の組織に様々な刺激が加わると、生体は局所で処理しようと反応し、防御機構として炎症・免疫反応を起こします。病変部には様々な炎症・免疫系の細胞が集まり、刺激の持続に応じて骨の中に広がり、骨を越えて歯肉や粘膜あるいは顔面の皮膚にまで到達するか、もしくは歯根周囲にある歯根膜という構造を通り、歯の上の方に達します。
根尖性歯周炎は”急性”と”慢性”とに分けられ、急性化したものでは、炎症の拡大が急速で、激しい痛みや腫れなどの自覚症状を伴います。慢性化したものでは、自覚症状がほとんどないか、あっても違和感程度でゆっくり病変が進行することが多いです。
今まで症状がなくてもレントゲン写真を撮って根の周りに黒い影がある場合、歯は感染しており、炎症反応があるということになります。
 
根管からの細菌の刺激によって炎症反応が生じますが、生体が防御するために必要な炎症反応のスペースを確保するために骨を吸収します。
 
根の周りに黒い影があるということは簡単に言うと、
根管が感染しており
②炎症反応によって歯の周りの骨が溶かされ
③膿が溜まっている
状態と言えます。
以上の状態の際は、症状のあるなしで感染の程度は測ることはできないため、症状がなくても黒い影が大きく治癒が見込めない場合は”抜歯”をいきなり宣告されることもあるかもしれません。
 
歯内療法専門医による根管治療の場合、治療によって治癒が見込めるか、それ以外の原因によって治癒が見込めないのかを最初の診察の際に説明していきます。
もちろん、治療介入してから問題が見つかる場合もありますが、その可能性についても治療を始める前にしっかりとご説明いたします。
もろもろの可能性を考え、ご納得した上で治療はスタートとなりますので、お悩みの歯がある場合、最初はお気軽にご相談ください。
 
豊島区池袋の倉本歯科医院では歯内療法専門医による根管治療、歯髄保存治療を行っております。
いきなり治療を始めるのではなく、しっかりとご説明し、同意された上で治療スタートとなりますので、お悩みの歯がありましたら、お気軽にご相談ください。

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2021年12月06日 13:10

なぜ歯が感染するのか

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今回は硬組織に覆われている歯がなぜ感染を起こし、痛みや腫れを引き起こすのか書いていきたいと思います。
 
虫歯などを引き起こす細菌が歯を溶かして虫歯となることは知っての通りだと思います。
それらの細菌の栄養素となる食べカスなどが歯に長く付着していると虫歯が進行してしまいます。
逆にごく初期の虫歯であれば、口の中の清掃をしっかりすることで細菌の栄養素を断つことによって虫歯の進行は抑制することが出来ます。
しかし、ごく初期の虫歯の場合は症状がないことが多いため気が付かず、穴が開いたり、症状が出た時には虫歯がかなり進行していることが多いです。
歯のクリーニングを目的とした定期的なメインテナンスも重要ですが、虫歯を初期で発見することによってその進行を抑制することもとても大事なのです。何も症状がなくても何年も歯科医院に行っていない方は、歯科医院の受診をお勧めします。
 
話を戻します。
虫歯が進行し、細菌が歯髄(歯の神経)に到達すると、生きている神経は侵入した細菌に対して炎症反応を起こして抵抗するため、深部まで細菌が侵入することは少ないです。
しかし、いったん歯の神経が無症状のうちに死んでしまうと、免疫系の防御機構が働かなくなるため、細菌は歯の中で増殖を繰り返し、根管の壁の中にある象牙細管と呼ばれる部分まで深く侵入してしまいます。
この状態になると感染根管と定義されます。
感染根管への治療は感染根管治療(=根管治療)が適用となります。
 
感染根管は生体の防御反応が起こらない歯の中という領域では、自然治癒はしません。
このような場合、感染根管に存在する感染域を歯科医師が徹底的に取り除き、根管を消毒して無害な状態とし、最後に緊密に根管を充填(封鎖)することで二次感染を防ぐことが原則となります。
その後、治癒経過は歯の周囲組織に存在する免疫系によって進んでいきます。
 
まとめると、歯が生きている内は歯の神経の中にいる細胞による免疫によって細菌の侵入はある程度防ぐことが出来ます。しかし、細菌の攻撃によって歯の神経が死んでしまうと免疫の細胞まで死んでしまうので、免疫による防御は働かなくなり、細菌の侵入を歯の深部まで用意に許してしまいます。
そのような状態になると自然治癒はしませんので、歯科医師による根管治療が必要となります。
 
この一連の流れは無症状で進行することが多く、気付いた時には歯の感染がかなり進んでいることも少なくはありません。無症状であっても根の周囲に悪影響を及ぼす可能性がある場合は治療を勧めることもあります。
 
豊島区池袋の倉本歯科医院では歯内療法専門医による根管治療、歯髄保存治療を行っております。
また、保険診療の範囲内での定期的なメインテナンスも実施しております。
お悩みの歯や、今の口の中の状況が気になった方は、是非ご相談ください。

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2021年12月02日 13:00

感染制御の重要性

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今回は歯内療法における感染制御の重要性について書いていきたいと思います。
 
歯内療法に携わる者であれば誰でも知っている論文があります。
1965年にKakehashiらが報告したThe effects of surgical exposures of dental pulps in germ-free and conventional laboratory ratsという論文です。
この論文は通常飼育のラット(実験用のネズミ)と比較して無菌飼育のラットにおける違いを、ラットの歯を露髄させ、それに起因する病理学的変化を観察することを目的としています。
通常飼育の場合、口の中には様々な細菌が存在しています。それが生体外に内は恒常性が維持され問題は起きませんが、生体内に侵入し恒常性が損なわれることによって”感染”を起こし炎症反応が生じます。
しかし、無菌飼育のラットの歯を露髄され神経を露出させても歯髄内に感染および炎症反応は生じず、生体防御反応により歯髄はデンティンブリッジと言われる硬組織によって保護されたという内容です。
この論文の重要な所は、歯内療法領域における疾患が細菌によって感染することによって炎症反応が生じ、症状が出現することを世界で初めて報告した所です。

それまでは、なぜ炎症反応が生じているのか推測はされていたのでしょうが、ハッキリと判明していませんでした。
中世ヨーロッパでは歯の中に悪魔が潜んでおり、その悪魔によって歯痛が引き起こされることを示唆させるイラストがあったくらいです。
1965年というと人類の歴史からするとかなり最近の出来事ですよね。
 
人間が生きていく上で無菌状態の中で生活することは不可能です。なので、虫歯などによって歯に感染を引き起こしてしまった場合は、その歯を治療する際に二次感染をどれだけさせないかが重要となってきます。
治療する度に細菌の量を減らすどころか、細菌の量を増やしてしまうのは本末転倒です。
 
歯内療法領域の、特に根管治療においては治療中の口の中の細菌などを根管内に侵入させない為にはラバーダム防湿”を行って治療します。このブログでも何回か書いているラバーダム防湿です。
しかし、数年前まであったラバーダム防湿の保険点数が診療項目から削除されてしまうほど、日本ではラバーダム防湿の重要性は軽く見られております。
実際に私が根管治療をする前にラバーダム防湿についても説明を行っていますが、初めて聞いた言われる患者さんがほとんどなのです。
マイクロスコープを使用したり、歯科用CTを併用したり、最新のNiTiファイルを使用したとしても、このラバーダム防湿を行っていなければ全てが無駄になってしまいかねません。
歯の状態によってはラバーダムを装着するのが困難な歯もあります。それは根管治療の全準備として、このブログでも書きました”隔壁”を作ったり、様々な種類のラバーダムシートを固定する為の”クランプ”と呼ばれる器具を用意することによって克服できます。
逆にどうやってもラバーダム防湿を装着することが困難な歯は、その場限りの治療は出来ても、予知性を担保できないので保存不可能と診断されます。
 
このように治療中の感染制御に対する姿勢が、根管治療の予後に影響を及ぼすと言っても過言ではありません。
このことを常に意識して歯内療法専門医は根管治療、歯髄保存治療を行っております。
 
豊島区池袋の倉本歯科医院では歯内療法専門医による根管治療、歯髄保存治療を行っております。
お悩みの歯がありましたら、ご相談ください。

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2021年12月01日 15:15

歯の痛みと関連痛について

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今回は歯内療法の領域では付いて回る痛み”について書いていきたいと思います。
 
歯科を受診しようと思うきっかけは痛みなどの症状が出て思い立つことが多いと思いますが、私たちはまずその痛みの原因について診査を行います。
問診・視診・触診・レントゲン診査等を行い、原因となる異常所見があるかどうか調べます。
そこで明らかな原因が特定できたら、その部分に対する治療を開始していきます。
しかし、診査を一通り行っても原因が特定できない場合もあります。そのような時に闇雲に治療介入をしてしまうと痛みが取れず、不必要に歯を侵襲することとなります。
 
痛みの分類分けを教科書的に行うと、
①侵害受容性疼痛
②神経障害性疼痛
③心因性疼痛
のように分けられます。
 
この中でも①の侵害受容性疼痛が歯科に占める割合は最も多く、簡単に言うと炎症や刺激による痛みです。
 
また、歯科の痛みは
①歯の痛み
②その他の口腔顔面痛(orofacial pain)
とに分けられます。
 
それぞれの痛みの由来によって
①歯原性疼痛(歯科的原因による痛み)
②非歯原性疼痛(歯や歯の周囲の痛みの原因が特定できない痛み)
のように分けられます。
 
②の非歯原性疼痛は、歯科以外の全身疾患や頭部疾患が原因で歯に痛みを生じる“関連痛”もあります
 
例を挙げると、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患・消化器疾患・甲状腺疾患・片頭痛や群発頭痛などの神経血管疾患・帯状疱疹などのウイルス感染症・糖尿病などの内分泌疾患・癌などの悪性腫瘍・上顎洞炎・筋・筋膜性疼痛症候群・顎関節症・三叉神経痛などがあります。
このように全身の疾患と歯の痛みと誤解するような関連痛がリンクする場合もあるので、最初の問診の際に現在治療中の全身疾患の有無を確認する必要があります。
 
また、このような関連痛は歯科の治療では改善することはなく、現在生じている痛みについてその可能性を示唆できる知識を有していることが大事となります。
最初に述べたように闇雲に歯科治療を介入してしまうと神経を取ったり、歯を抜いても痛みが取れないなんてことも起きかねません。
いくつもの可能性を考慮して診察、治療を行っていくことが原因不明な痛みに対する対処法となります。
 
歯科治療によって改善が見込めない痛みについてはペインクリニックなどの専門医、歯科以外の疾患による痛みが予想される際は医科の専門医と連携をして診察にあたることもあります。
 
豊島区池袋の倉本歯科医院では歯内療法専門医による根管治療、歯髄保存治療を行っております。
お悩みの歯がありましたら、ご相談ください。

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2021年11月29日 16:14

MTAの炎症抑制効果について

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前回までは歯内治療用材料として幅広く使用されているMTA(Mineral trioxcide aggregate)について書いていきました。
今回は私が東京医科歯科大学で研究していたMTAの炎症抑制効果について書いていきたいと思います。
 
今までの論文による報告でMTAの特性として
①優れた硬組織誘導能
②良好な生体親和性
③良好な封鎖性
④親水性
などが挙げられます。
 
しかし、歯髄保存治療で使用される場面では、本来生体内にある歯髄が生体外に露出し、また虫歯などによる細菌刺激や外界から様々な刺激を受けている状況が多く、歯髄はその時点で炎症反応が生じています。
歯髄は歯という硬い組織に囲まれているので、ひとたび炎症反応が生じると不可逆的に進行しやすい環境にあります。他の組織が炎症反応を生じると内圧が亢進し”腫れ”という症状が出ますが、歯髄は硬い組織に囲まれているので腫れることができないのです。その為、痛みが他の組織より出やすく、またその炎症反応を除去するには歯髄を除去するほか方法がなくなってしまいます。
 
MTAを使用した歯髄保存治療は良好な結果を示している報告が多く存在し、実際に診療にあたっていてもそれを実感することが出来ます。
その為、MTAには貼付した部位に対する炎症抑制効果があるのではないかと仮説を立てて研究をスタートしました。
 
私が研究した内容は炎症反応に関与することが多いマクロファージ”という細胞を主に使用しています。マクロファージは細菌による刺激や外界からの刺激を受けるとそれに反応し、周囲の細胞にそのことを伝える抗原提示細胞としての役割があります。マクロファージに対して炎症反応を抑制する効果があるのなら周囲の細胞へ刺激を受けているということを伝える反応を抑えられるのではないかと考えました。
 
最初は主に一つの細胞を使用しての実験を行い、その効果を検証していきます。
そのことを”In Vitro”の研究と言います。直訳すると試験管内で完結する研究のことです。
そこで結果を出して次の段階の”In Vivo”の研究、すなわち生体内での研究に移行します。
 
MTAによるマクロファージに対する炎症抑制効果を確認した後に、In Vivoの研究では実験用のラットを使用してMTAの炎症抑制効果を観察します。
ここでは人の歯髄保存治療と同じような環境を作ることが重要となります。
実際にラット歯髄を露髄させ、MTAによる直接覆髄を行いました。その後期間を置き、実際に歯髄内の細胞はどのような反応を起こしているのか観察していきます。
炎症反応を観察するにはその歯を抜いて歯髄を取り出し研究用の顕微鏡で観察する必要があります。なので実験の為に人の歯を使用することは出来ません。
診療中の歯髄の炎症反応の程度を測ることが出来ないのもその為です。
 
私の研究ではIn Vivoの実験においてもMTAは炎症を抑制させる効果のある物質の発現に寄与していることが分かりました。
 
このように、その材料にどのような効果があるのか検証するにはいくつものステップを踏んで検証する必要があります。
過去にどのような報告がされているのか、最新の報告はどのような結果となっているのか、日々アップデートが必要となります。
実際の診療で使用する材料はメーカーの指示に従うだけでなく、第三者の目からみてどのような効果があるのか検証している論文を調べることはとても重要なことなのです。
 
歯内療法専門医は歯内療法に関する過去、最新の論文をベースとして治療方法を作り上げていきます。それは一度決めたら不変的なものではなく、状況によって治療法も変えていく必要があります。
 
豊島区池袋の倉本歯科医院では歯内療法専門医による根管治療、歯髄保存治療を行っております。
お悩みの歯がありましたら、ご相談ください。
 
2021年11月26日 13:00

MTAについて

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前回、歯髄保存治療に使用されることの多いMTA(Mineral trioxcide aggregateという材料について書いていきました。
 
MTAに関しては歯髄保存治療のみだけではなく、根管治療を含めた歯内療法の分野全般で使う機会がある材料であり、今回はその使いどころについて書いていきたいと思います。
 
日本の保険制度においてMTAが使える場面は直接覆髄のみとなります。直接覆髄とは歯髄保存治療の範囲内の術式です。
しかし、元々MTAという材料はアメリカのロマリンダ大学のTorabinejad先生によって歯内療法材料として開発されました。穿孔”と言って何らかの原因によって歯に穴が開いた際の封鎖用に用いられ、その後歯内療法の分野においてその適用範囲を拡大していきました。
 
現在、歯内療法におけるMTAの使用場面は以下の通りです。
①露髄部への直接覆髄
②歯髄断髄への覆髄
③根尖封鎖
④穿孔封鎖
⑤再生歯内療法時への適用

 
①については歯髄保存治療の際に用いられますが、②の歯髄断髄とは一部の歯髄を除去し残りの歯髄を保存する際に適用となります。この時も露出して外界と交通している歯髄面にMTAを貼付します。①と②を合わせて歯髄覆髄材料としての用途となります。
 
③について、根尖の直径のサイズが大き過ぎる場合、根管充填材料として最もスタンダードであるガッタパーチャを使用した根管充填ではその封鎖性が根尖のサイズが大きくなるにつれて劣ってくるとの報告があります。封鎖性が良くないと将来的に再感染のリスクが上がり再発する恐れが出てきます。根尖のサイズが大きくなってしまう原因としては複数回にわたる根管治療であったり、元々の解剖学的な形態と様々です。
そのような場合に根尖を封鎖する目的でMTAを使用します。
 
④について、穿孔を発見した際は一昔前だとプラスチックのような材料であるレジン系の材料で封鎖をするのが一般的でした。しかし、前回もお話ししたように歯科材料の多くは細かい意味で生体親和性に劣るので、穿孔部の先にある粘膜組織や骨組織などに対する炎症反応により予後があまり良くありませんでした。予後が悪い場合は抜歯も視野に入れざるをえませんでしたが、穿孔部にMTAを用いることで炎症反応が起きにくく、かつ封鎖性も良好な為、予知性をある程度は担保できるようになりました。
 
⑤については、またの機会に詳しく説明していきたいと思います。
 
以上のように歯内療法材料としてのMTAの適用範囲は多岐に渡りますが、保険診療で認められた使用方法はほんのごく一部なのです。
保険診療の範囲内だと治せる見込みがある歯を見捨てざるをえない状況が多くなってしまいます。このように保険診療ではカバーしきれない材料や器具を使用していくことが多いので、歯内療法専門医による治療は保険外となってしまうことが多いのです。
 
豊島区池袋の倉本歯科医院では歯内療法専門医による根管治療、歯髄保存治療を行っております。
歯内療法専門医は一本の歯を残す為にありとあらゆる可能性を模索して診療にあたっております。逆に治る見込みがない歯に関しては初診時に詳しくご説明して無理に治療には進まないことがあります。
お悩みの歯がありましたら、ご相談ください。
 
2021年11月25日 15:44

歯髄保存治療の材料について

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今回は歯髄保存治療で使用する材料について書いていきたいと思います。
 
長い間、歯髄保存治療で用いられていた材料は水酸化カルシウム”を配合した材料です。
1920年頃から用いられており、歯髄保存治療のゴールドスタンダードとされてきました。しかし、水酸化カルシウムを用いた際の予後については確実性が不確かな側面がありました。
それにとって代わる材料として1990年代より用いられ始めて出したのが”MTA”(Mineral trioxcide aggregate)という材料です。
簡単に言うと、建築現場などでよく使用されるセメントを医療用に応用した材料です。
 
MTAは私が東京医科歯科大学で研究に使用していた材料であり、その際はMTAの炎症抑制効果についての研究をしておりました。その話はまた機会がありましたら書いていきたいと思います。
 
MTAの作用としては
①優れた硬組織誘導能
②良好な生体親和性
③良好な封鎖性
④親水性
などが挙げられます。
 
①について、刺激を受けた歯髄はその内部に存在する硬組織を形成する細胞によって石灰化が生じてきます。露出した歯髄の上にMTAを貼付することで歯髄のバリアーとなる硬組織の誘導を促しやすいとの報告があります。それにより歯髄の生活状態を維持しやすい環境を作りやすくなります。
 
②について、一般的な歯科材料は生体親和性に優れているとは言えません。それは細胞に対する毒性であったり様々な要因によります。しかし、MTAは生体親和性が優れていることによって、適用した周囲の組織の治癒を邪魔することなく使用できます。
 
③について、歯髄保存治療を行う上で重要となるのが、材料を貼付してから歯髄の硬組織形成が促され状態が落ち着くまで良好な封鎖性を保つことです。封鎖性が甘いと歯と材料との隙間から感染が生じ、歯髄保存が失敗に終わることになります。
 
④について、歯科材料の多くは水分があることにより、その作用を阻害されることが多いのですが、MTAに関しては水分があることにより強固に硬化されます。それにより、出血などがある場面においてもしっかりと適用することが可能となります。
 
今回はMTAについて簡単に概要を書いていきました。
次回もこのMTAについてより掘り下げて書いていきたいと思います。
 
豊島区池袋の倉本歯科医院では歯内療法専門医による根管治療、歯髄保存治療を行っております。
お悩みの歯がありましたら、ご相談ください。
 
2021年11月24日 12:26

歯髄保存の条件について

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今回は歯髄保存治療を行う上での歯髄の臨床的な条件について書いていきたいと思います。
 
歯髄保存治療を行う上で重要なのが、保存できる歯髄なのかどうかという点です。臨床的に症状がなくなり経過良好に思えても、実は歯髄が失活(神経が死んでしまう)していることがあるからです。歯髄が失活してしまうと今後、根管に細菌等の感染が生じると根尖病変(根の先に膿が生じる)ができたり、それによる痛みや腫れなどの症状が出現する可能性があります。
教科書的に歯髄を保存する上での適応症は、
①露髄(神経が露出する)の危険性があるが、その直径が小さいもの
②歯髄に感染が生じていないこと
③可逆性歯髄炎であること
④確実に経過観察が行える症例
と記載されております。
 
①について、露髄した歯髄の上から材料を貼付して歯髄保存を行いますが、その大きさが小さければ小さいほど条件は良いです。教科書的には2mmが上限と記載されていますが、実際は2mm以上の露髄を認めた時でも歯髄の保存は可能になるケースは多いです。しかし、露髄の大きさが大きければ大きいほど歯髄内への感染が進んでいる場合がある為、慎重に保存可能かどうか判断していかなければなりません。
 
②について、歯髄に感染が起きている場合は最初に述べたように根尖病変が発生する可能性が高まります。なので、露髄した歯髄の状態をよく観察する必要があります。
 
③について、可逆性歯髄炎とは“炎症状態にある歯髄が元の健全な状態に戻ることができる範囲内である”ということです。逆に歯髄の保存が不可能となる状態のことを“不可逆性歯髄炎”と言います。不可逆性歯髄炎の場合は歯髄除去療法が適応となります。
 
④について、経過観察が確実に行えない場合、歯髄が失活してしまったり、症状が出てしまった際に迅速に対応することが難しくなります。無症状のまま病状が進行してしまう可能性も高いことから、長いと半年から1年ほどは定期的に状態の確認をすることが大切となります。
 
術前に歯髄保存ができる可能性が高い条件としては、
①強い自発痛(何もしないでもズキズキ痛む状態)がない
②長い誘発痛ではない(一度シミてからそれが1分以上持続するような痛み)
となります。
逆に上記のような症状が術前にある場合は歯髄保存が困難となる不可逆性歯髄の状態と判断されます。
 
術中の歯髄の状態によっても術後の予知性がある程度予測できます。
①歯髄からの出欠が軽度であり、圧迫止血により止血できる
②歯髄組織の状態に異常がない
③虫歯を全て取り除いても歯髄に大きな支障がない
などが挙げられます。
 
①について、歯髄組織は血管も含んでいることから露出することによって多少出血を生じます。炎症が強い場合、その出血の止血が困難となり歯髄の保存が不可能となります。逆に止血がしっかりと行えれば歯髄保存の可能性はかなり高まります。
 
②について、炎症が強い場合の歯髄組織からは止血ができないほどの出血が続きます。逆に歯髄の生活力が低い場合(歯髄が死にかけている)は歯髄の色が白っぽく見えたり、更に歯髄があるはずのスペースに歯髄が存在せずスカスカな状態が観察されます。このような状態の場合も歯髄保存は不可能となります。
 
③について、虫歯を全て取り除いた際に、歯髄をカバーできる健康な歯質がないと歯髄の保存は不可能となります。
 
術中にも以上のような点を注意しながら歯髄保存を試みていきます。
 
歯髄の状態を正確に把握するためには細胞レベルでの観察が必要となりますが、それは実際の診療中には不可能なので、様々なポイントを押さえながら進めていきます。
 
豊島区池袋の倉本歯科医院では歯内療法専門医による根管治療、歯髄保存治療を行っております。
歯髄保存治療を行う上でも大切になってくるのが、ラバーダム防湿をしっかり行い、マイクロスコープを使用して虫歯をしっかり取り除き、歯髄の状態をよく観察することです。
お悩みの歯がありましたら、ご相談ください。
2021年11月22日 10:16

歯髄保存について

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今回からは歯髄保存治療の事について書いていきたいと思います。
 
歯髄保存治療とは、教科書的には歯髄鎮痛消炎療法”覆髄法”とに分けられます。
そもそも歯髄に対する処置が必要となる原因はいくつかに分類されます。
①虫歯などが原因による細菌学的原因
②顔をぶつけた際に生じた外傷、歯科治療による機械的刺激や温度的刺激による物理的原因
③歯科材料中の化学物質などによる化学的原因
が挙げられます。
 
その中でも最も多いのが虫歯による細菌学的原因です。
虫歯が歯の神経(歯髄)に達している場合はもちろんのこと、歯髄に近接していたり、あるいは近接していなくても歯の内部構造を通じて歯髄へ影響を及ぼしていることがあります。
そのような場合に歯髄保存治療が適用となります。

また、我々が患者様にご相談されることで一番多いのが、「受診した歯科医院で症状がなくても歯の神経を取る必要があると言われたけど取る必要があるか」です。
歯髄を残せるのであれば歯科医師も無暗に歯髄除去を行いたいとは思っていないのです。では、なぜそのように説明を受けるのか?
それは、歯髄の状態を治療中に把握するのが難しいからです。虫歯が歯髄に近接している場合、歯髄内でも目に見えない炎症反応が起こっています。それは細胞レベルでのことなので臨床的に判断するのは難しいのです。
その見積もりを甘くしてしまうと術後に症状が出てしまったり、感染している歯髄を取り残すことで根の先の周りに膿ができてしまったりしてしまいます。
 
それでは、我々のような歯内療法専門医はなぜ歯髄保存治療を率先して行っているのか。
それは、術前の症状や歯の状態、レントゲン写真、CT画像、術中の歯の状態あるいは歯髄の状態をマイクロスコープで観察することで、ある程度の予知性が判断できるからです。
これは個人個人の経験を頼る場合もありますが、多くは論文的な裏打ちを元に判断しています。
それにより、高い確率での歯髄保存を可能にしております。その詳しい内容については今後書いていきたいと思います。
 
豊島区池袋の倉本歯科医院では歯内療法専門医による根管治療、歯髄保存治療を行っております。
お悩みの歯がありましたら、ご相談ください。
 
2021年11月19日 12:55

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